仕事は幸せのツールか、それとも消耗か? ― 『狭小邸宅』から考える

読書

読んだきっかけ

私は今年の9月から不動産テックベンチャーに入社しました。入社してまもなく、不動産業界のビジネスパーソンがどのような仕事をしているのか、その実態をまだつかめていませんでした。そんな時に、自社の社員から「不動産会社の実務を知るならこの本がいい、サクッと読める」と薦められたのが本書。業界を知る入り口として手に取ったのがきっかけです。

本の概要

著者紹介

新庄 耕(しんじょう・こう)
1976年、東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、広告代理店勤務などを経て執筆活動を開始。『狭小邸宅』で第36回すばる文学賞を受賞しデビュー。以後、不動産業界や都市開発を題材にした小説を多く執筆し、地面師詐欺を扱った社会派小説『地面士たち』は直木賞候補となり大きな話題を呼んだ。不動産業界の光と影を描いた作品が多く、現実の社会問題に迫る作風で知られる。現代社会の矛盾や人間の葛藤をリアルに描き出す作風で注目される作家。

あらすじ

学歴も経験も関係ない。評価基準は「どれだけ家を売ったか」だけ。大学を卒業した松尾が入社したのは、不動産販売会社。そこは、きついノルマと過酷な歩合給、そして暴力すら日常にある苛烈な環境でした。アポも取れず家も売れない松尾に、ついに上司から「辞めちまえ」と突きつけられる――。松尾の葛藤する姿を通じ、不動産営業の実態をリアルに描いた青春小説です。

学びポイント+自分の気づき

不動産営業マンの実務が分かる

主人公・松尾の働き方は、今の時代にはそぐわないほど過酷です。朝7時から夜11時まで週6日勤務という世界。極端な描写ではありますが、新規顧客の開拓から内見案内、契約クロージングまで、不動産営業の流れが克明に描かれており、「建売住宅の営業マンの仕事とは何か」が具体的に理解できました。

「仕事とは何か」を考えさせられる

松尾が出会う豊川課長は、成果を出し続ける優秀な上司です。的確なフィードバックを与え、松尾の成長を後押しします。しかし、松尾自身は確固たるビジョンを持たないまま仕事にのめり込み、私生活を犠牲にしていきます。その結果、物語の終わりも決してハッピーエンドではありません。

ここから私が考えたのは、「仕事は何のためにあるのか」という問いです。私は、仕事を人生を幸せに過ごすための“ツール”だと捉えています。
幸せは大きく3つに分けられると思います。

  • ①達成感
  • ②ふれあい
  • ③リラックス

仕事は、日々の目標達成による①達成感や、人との関わりによる②ふれあいを得られる最高の手段です。ただし、それだけでは不十分。より大きな幸せを得るには、長期的な羅針盤=将来のビジョンが必要です。主人公はそのビジョンを持たなかったからこそ、現実から逃げるように日々を消耗してしまいました。

この本を読んで改めて感じたのは、私は不動産テックでの経験を、将来の自身の土地活用・事業化にどうつなげるかを考えていきたいです。

総評

  • 不動産業界の営業が実際にどんな仕事をしているのか知りたい方
  • 自分にとって「仕事」とは何かを改めて考えたい方

そんな方におすすめの一冊です。小説としての読み応えもあり、業界に関心がなくても楽しめます。私にとっては、不動産の世界を知ると同時に、単なる小説ではなく、仕事や人生をどう捉えるかを考える契機となる一冊でした。

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